トリコチロマニア(抜毛症)とは?

トリコチロマニア(抜毛症)とは、一種の癖で自分で髪の毛を抜いてしまう事を繰り返し、その結果毛髪が喪失してしまう脱毛症のことです。
抜毛症は、正常な毛を引き抜いてしまう一種の性癖であるとされ、精神医学的障害の一種と定められています。
抜毛癖(ばつもうへき)と呼ばれる事もあります。
主に頭皮の髪の毛を引き抜くケースが多く報告されており、その為禿頭病(とくとうびょう)と呼ばれることもあります。
トリコチロマニア(抜毛症)自体は、AGAなどの発毛サイクルの異常とは異なり、髪の毛自体には問題がない場合が多く、髪の毛を引き抜く癖による直接的な行為が原因となる事が多いと報告されています。

トリコチロマニア(抜毛症)で最も多くみられる場所は、頭髪、眉、眼瞼からの抜毛であると報告されています。
トリコチロマニア(抜毛症)の患者は、毛髪を引き抜く行為を無意識に行う患者もいれば、自分で意識した上で毛髪を引き抜く患者もいるそうです。
次に、トリコチロマニア(抜毛症)の主な原因についてご説明したいと思います。
トリコチロマニアの主な原因

トリコチロマニア(抜毛症)の原因は、人により様々な原因が考えられています。
トリコチロマニア(抜毛症)を発症する人の割合は、一説によると人口の0.5~2%が抜毛症だとされています。
トリコチロマニア(抜毛症)は小学生から思春期の女子に多い事が報告されていますが、成人でも発症する場合があります。
トリコチロマニア(抜毛症)の頻度としては円形脱毛症の10~20%と報告されていますが、抜毛行為自体は学童期の癖としてはかなり多いようです。

トリコチロマニア(抜毛症)の原因として、明確な原因は判明していませんが、以前はストレスや不安が主な原因とされていました。
しかし、最近の研究結果ではトリコチロマニア(抜毛症)の原因は神経細胞と脳のコミュニケーションの一部に支障があるために起こるという説が有力とされています。
発症するケースとして、家庭や学校での人間関係で悩んでいる場合に多い傾向が見られ、大人しい内向的性格の人が発症するケースも多く報告されています。
トリコチロマニアの治療法

トリコチロマニア(抜毛症)の改善のために有力とされる治療法としては、「SSRIまたはクロミプラミン」「認知行動療法」があります。
SSRIとは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬のことで、脳内の神経伝達を改善し、意欲を高めたり、憂鬱な気分などを改善する薬です。
クロミプラミンとは、抗うつ薬として用いられる有機化合物の一種で脳内のセロトニンおよびノルアドレナリンの神経終末への取り込みを阻害する働きがあります。
抜毛については、デシプラミン(ノルアドレナリンの再取り込みを阻害する三環系抗うつ薬)よりもクロミプラミンの方が効果的であったと報告されています。
認知行動療法については、トリコチロマニア(抜毛症)の患者の症例によって最適な方法を医師の診察の元で行う事が有効とされています。
具体的な例では、主に行動療法である「習慣逆転法」を用いるケースがあります。
習慣逆転法は症状への気づき訓練(セルフモニタリング、行動の誘因の同定)、刺激統制(抜毛を開始する可能性を低下させるために状況を変更すること)、および競合反応訓練(抜毛の代替に他の行動を用いる)などがあります。
トリコチロマニア(抜毛症)については、精神的要因から起こる事が多い為、身近な家族は、抜毛症の患者に対して、抜毛した際に叱ったり注意したりせず、暖かい気持ちで優しく接してあげる事も重要です。
トリコチロマニア(抜毛症)のまとめ
- トリコチロマニア(抜毛症)とは、自分の毛髪を引き抜いてしまう事で起こる脱毛症
- トリコチロマニア(抜毛症)の主な原因は精神疾患である場合がほとんど
- トリコチロマニア(抜毛症)は思春期の女子に多くみられるが成人でも起こりうる
- トリコチロマニア(抜毛症)の改善、治療には認知行動療法と薬物療法が有効とされている
- トリコチロマニア(抜毛症)には患者の周辺の家族の理解も重要