「急に丸く髪が抜けた」「これってAGAなの?」「ストレスが原因なの?」と不安になっている方もいると思います。
円形脱毛症は、AGAとは異なるタイプの脱毛症です。典型的には円形や楕円形の脱毛斑が突然現れますが、1か所だけとは限らず、複数か所に生じたり、頭髪全体や眉毛・まつ毛・体毛まで脱毛が広がったりすることもあります。
円形脱毛症は以前から「ストレスで起こる」と説明されることがありますが、現在は成長期にある毛包を標的とする自己免疫性疾患と考えられています。ストレスだけですべてを説明できる病気ではありません。
この記事では、毛髪診断士の禿吉が、円形脱毛症の症状、原因、AGAとの違い、治療、受診の目安までわかりやすく整理します。
この記事について
この記事は毛髪診断士の禿吉が執筆・編集しています。毛髪診断士は医師ではないため、円形脱毛症の診断や治療は行えません。急な脱毛、脱毛範囲の拡大、頭髪以外の脱毛などがある場合は、皮膚科などの医療機関へご相談ください。
円形脱毛症とは?
円形脱毛症は、典型的には円形または類円形の脱毛斑が生じる、後天性の非瘢痕性脱毛症です。
名前に「円形」とありますが、必ずしも小さな丸い脱毛が1か所だけ生じるわけではありません。複数の脱毛斑ができたり、広い範囲へ脱毛が進んだり、眉毛やまつ毛、体毛などにも影響する場合があります。
円形脱毛症は「丸いハゲが1つできる病気」だけではありません。症状の範囲や経過には大きな個人差があります。
円形脱毛症とAGAの違い
円形脱毛症とAGAは、どちらも髪が減るという点では似ていますが、発症の仕組みや進み方が異なります。
| 比較項目 | 円形脱毛症 | AGA |
|---|---|---|
| 主な仕組み | 自己免疫の関与が重要 | DHTや遺伝的要因などが関係 |
| 進み方 | 比較的急に脱毛斑が現れることがある | 生え際・頭頂部を中心に徐々に進行 |
| 見た目 | 境界が比較的はっきりした脱毛斑など | 髪が徐々に細く短くなる |
| 主な治療 | 症状・範囲に応じた皮膚科治療 | フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルなど |
簡単にいえば、円形脱毛症は急に部分的な脱毛がみられることがある脱毛症、AGAは髪が徐々に細く短くなりながら進行する脱毛症です。
ただし、実際の脱毛症にはさまざまなタイプがあり、見た目だけで確定診断することはできません。
円形脱毛症の主な症状
円形脱毛症では、頭皮に円形や楕円形の脱毛斑が生じることがあります。症状は人によって異なりますが、次のような変化がみられる場合があります。
- 一部の髪が比較的急に抜ける
- 境界が比較的はっきりした脱毛斑ができる
- 脱毛斑が複数できる
- 脱毛範囲が広がる
- 眉毛・まつ毛・体毛にも脱毛がみられる
- 爪に小さなくぼみなどの変化がみられることがある
急な脱毛がみられた場合は、AGAだと自己判断せず、皮膚科などで原因を確認することが大切です。
円形脱毛症にはいくつかのタイプがある
円形脱毛症は、脱毛の範囲や広がり方によっていくつかのタイプに分けられます。
単発型
脱毛斑が1か所にみられるタイプです。一般的にイメージされる「円形脱毛症」に近い形です。
多発型
複数の脱毛斑がみられるタイプです。脱毛斑同士がつながり、範囲が広がることもあります。
蛇行型
後頭部から側頭部などにかけて、帯状・蛇行状に脱毛が広がるタイプです。
全頭型
頭髪の大部分、またはほぼすべてが脱毛するタイプです。
汎発型
頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、ひげ、体毛などにも脱毛が広がるタイプです。
円形脱毛症は、脱毛斑の数や範囲によって治療方針も変わります。
円形脱毛症はなぜ起こる?
円形脱毛症の発症を1つの原因だけで説明することはできませんが、現在は自己免疫の関与が重要と考えられています。
免疫は本来、ウイルスや細菌などから体を守る仕組みです。しかし円形脱毛症では、免疫反応が成長期にある毛包へ向かうことで、毛髪の成長に影響すると考えられています。
そのため、円形脱毛症は単純に「毛根の栄養不足」や「血流不足」で起こる病気ではありません。
ストレスだけが原因ではない
「円形脱毛症=ストレス」というイメージは強いですが、ストレスだけが円形脱毛症の原因とは考えられていません。
精神的・身体的なストレスが発症の前後にみられるケースはありますが、強いストレスがない状態で発症する人もいますし、ストレスを受けたすべての人に円形脱毛症が起こるわけでもありません。
「最近ストレスがあったから円形脱毛症になった」と自己判断して原因を決めつけないことが大切です。
円形脱毛症は自然に治ることもある?
円形脱毛症では、経過の中で自然に発毛がみられることもあります。
一方で、症状が広がる人、再発を繰り返す人、長期間続く人もいるため、「自然に治ることもあるから放置して大丈夫」とは言い切れません。
特に、脱毛範囲が広がっている、複数の脱毛斑がある、眉毛やまつ毛にも脱毛がみられる、再発しているといった場合には、早めに皮膚科へ相談することをおすすめします。
円形脱毛症ではどんな治療が行われる?
円形脱毛症の治療は、年齢、脱毛範囲、重症度、発症からの期間、これまでの治療経過などによって異なります。
日本皮膚科学会の「円形脱毛症診療ガイドライン2024」では、症状に応じて複数の治療選択肢が検討されています。
医療機関では、たとえば次のような治療が選択される場合があります。
- ステロイド外用療法
- ステロイド局所注射療法
- 局所免疫療法
- 紫外線などを用いた光線療法
- 症状に応じたその他の薬物療法
- 条件を満たす重症・難治例に対するJAK阻害薬等
すべての患者に同じ治療を行うわけではありません。特に広範囲に脱毛がみられるケースや治療抵抗性のケースでは、専門的な判断が必要になります。
重症・難治例ではJAK阻害薬が選択肢になることもある
近年、円形脱毛症の治療ではJAK阻害薬などの新しい治療選択肢も登場しています。
日本では、重症かつ難治性の円形脱毛症に対して、バリシチニブやリトレシチニブなどが承認されています。
ただし、これらは「円形脱毛症なら誰でも使える薬」ではありません。
JAK阻害薬等は、適応条件、年齢、脱毛範囲、治療歴、感染症などのリスクを確認したうえで、専門的な管理下で使用される治療です。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、治療環境が整った施設で、添付文書の適応を満たし、治療による利益がリスクを上回ると判断される場合など、一定の条件を満たすケースに限って推奨されています。
治療の適否は自己判断せず、円形脱毛症の診療に詳しい医師へ相談してください。
市販の育毛剤で円形脱毛症は治る?
円形脱毛症が疑われる場合、市販の育毛剤だけで治療しようとするのはおすすめできません。
円形脱毛症は自己免疫の関与が重要と考えられる脱毛症であり、AGAや一般的な頭皮ケアとは治療の考え方が異なります。
「とりあえず育毛剤を使って様子を見る」より、まず皮膚科で脱毛の原因を確認することが大切です。
フィナステリドは円形脱毛症に効く?
フィナステリドは、AGAの進行に関係するDHTの生成を抑える目的で使用される薬です。
そのため、フィナステリドは円形脱毛症を治療する目的で使用するAGA治療薬ではありません。
円形脱毛症とAGAでは発症の仕組みが異なるため、「髪が抜けたからフィナステリドを飲む」という考え方は避けてください。
ミノキシジルは円形脱毛症に使う?
外用ミノキシジルはAGA治療で発毛を促す目的で使用される薬として知られていますが、円形脱毛症ではAGAと同じ考え方で自己判断して使用するべきではありません。
円形脱毛症では、脱毛の範囲や経過、年齢などによって治療方法が異なります。
AGA治療薬を円形脱毛症へ自己判断で使用するのではなく、まず診断を受けることが重要です。
円形脱毛症は子どもにも起こる?
はい。円形脱毛症は年齢を問わず発症する可能性があり、子どもにも起こります。
子どもの脱毛は本人だけでなく家族にとっても大きな不安になりやすく、年齢によって治療の選択肢も異なります。自己判断で市販薬を使用せず、皮膚科へ相談してください。
女性にも円形脱毛症は起こる?
はい。円形脱毛症は男性だけの病気ではなく、女性にも起こります。
AGAのような男性型脱毛症とは発症の仕組みが異なり、性別を問わず発症する可能性があります。
円形脱毛症は再発する?
円形脱毛症は、一度発毛がみられたあとでも再発することがあります。
一度改善したからといって「もう二度と起こらない」とは限らず、再発を繰り返すケースもあります。
再発の頻度や経過には個人差があるため、脱毛が再びみられた場合は早めに医師へ相談してください。
円形脱毛症と普通の抜け毛はどう違う?
髪は毛周期を繰り返しているため、健康な状態でも日常的に自然に抜けます。
一方、円形脱毛症では、一部の髪がまとまって抜けたり、境界の比較的はっきりした脱毛斑ができたりすることがあります。
AGAでは、生え際や頭頂部などを中心に髪が細く短くなり、徐々に地肌が目立つようになるケースが一般的です。
円形脱毛症とAGAが同時に起こることはある?
円形脱毛症とAGAは別の脱毛症なので、同じ人に両方が存在する可能性はあります。
そのため、「円形脱毛症があるからAGAではない」「AGAがあるから円形脱毛症ではない」と単純に判断することはできません。
生え際や頭頂部の薄毛とは別に、急な円形の脱毛斑がみられるなど、異なるタイプの脱毛が疑われる場合には医療機関へ相談してください。
どのタイミングで皮膚科へ行くべき?
円形脱毛症が疑われる場合は、早めに皮膚科へ相談することをおすすめします。特に次のような変化がある場合は、自己判断で長期間様子を見るより医療機関で確認した方が安心です。
- 急に円形・楕円形に髪が抜けた
- 脱毛斑の数が増えている
- 脱毛範囲が広がっている
- 眉毛やまつ毛にも脱毛がある
- 頭髪全体が急速に薄くなっている
- 繰り返し再発している
- 子どもに脱毛がみられる
- 爪にも変化がみられる
円形脱毛症は症状の範囲や経過によって治療選択が変わるため、早い段階で現在の状態を確認しておくことには意味があります。
円形脱毛症が疑われるときに避けたいこと
急に髪が抜けると、不安からさまざまな方法を試したくなると思います。ただし、原因が確認できていない段階で自己流の対策を重ねることはおすすめできません。
- 頭皮を強くこすったりマッサージしたりする
- 刺激の強い育毛剤を複数使う
- AGA治療薬を自己判断で使用する
- 個人輸入した医薬品を使用する
- SNSの体験談だけを根拠に治療を決める
まずはどのタイプの脱毛症なのかを確認することが先です。
円形脱毛症についてよくある質問
円形脱毛症はストレスが原因ですか?
ストレスが発症の前後にみられることはありますが、ストレスだけが原因とは考えられていません。現在は自己免疫の関与が重要とされています。
円形脱毛症は放っておけば治りますか?
自然に発毛がみられるケースはありますが、すべての人が自然に改善するわけではありません。脱毛範囲が広がる、再発する、複数か所に生じる場合などは皮膚科へ相談してください。
円形脱毛症はうつりますか?
円形脱毛症は感染症ではないため、他の人へうつる病気ではありません。
円形脱毛症の部分をマッサージすると治りますか?
頭皮マッサージだけで円形脱毛症を治療できるとはいえません。強く刺激すると頭皮へ負担をかけることもあるため、自己流の強い刺激は避けましょう。
円形脱毛症でも髪は生えてきますか?
発毛がみられるケースはあります。ただし、回復までの期間や治療への反応、再発の有無には個人差があります。
AGAクリニックへ行けばいいですか?
急な円形の脱毛など、円形脱毛症が疑われる場合には、まず皮膚科で原因を確認するのがわかりやすいでしょう。AGA治療を専門とするクリニックとは治療対象や対応範囲が異なる場合があります。
JAK阻害薬を使えば治りますか?
JAK阻害薬等は、条件を満たす重症・難治性の円形脱毛症に対する治療選択肢の一つです。ただし、すべての患者に適しているわけではなく、副作用や感染症などへの注意も必要です。専門医が治療による利益とリスクを判断したうえで使用されます。
まとめ|円形脱毛症はAGAとは別の脱毛症
円形脱毛症は、AGAとは発症の仕組みや治療方法が異なる脱毛症です。
- 円形・楕円形の脱毛斑が突然みられることがある
- 1か所だけでなく複数か所や広範囲に広がることもある
- 自己免疫の関与が重要と考えられている
- ストレスだけが原因ではない
- 子どもや女性にも起こる
- 発毛がみられることもあるが再発する場合もある
- 症状に応じて複数の治療法がある
- 重症・難治例ではJAK阻害薬等が選択肢になる場合もある
特に大切なのは、「髪が抜けた=AGA」と決めつけないことです。AGAと円形脱毛症では原因も治療も異なるため、急な脱毛斑や広がる脱毛がある場合は、自己判断で育毛剤やAGA治療薬を使用せず、皮膚科などの医療機関へ相談してください。
参考情報
※円形脱毛症の治療法や医薬品の適応、安全性情報は更新される場合があります。実際の治療については、皮膚科医および最新の公式情報をご確認ください。



